労働時間管理

法定労働時間と所定労働時間

法定労働時間

 労基法では、「休憩時間を除き1週間について40時間を超えて、労働させてはならない」「1週間の各日については、労働者に、休憩時間を除き1日について8時間を超えて、労働させてはならない」と定めています。しかし、この法定労働時間はあくまでも「最低条件」であり、事業場ごとに実際の労働時間について就業規則などで定める必要があります。これに違反した場合は、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金となります。
 この法定労働時間を超えて労働させるためには、あらかじめ時間外労働についての労使協定(36協定)を結び、所轄の労働基準監督署に届け出ることが必要です。また、時間外労働をさせた場合には、使用者はその分の割増賃金を支払わなければなりません。

 

◇所定労働時間 

  所定労働時間は、「1日7時間、1週35時間」というように、法定労働時間の枠内で規定する必要があります。ところで、この例(週5日労働を前提)において、ある1日に2時間の時間外労働(72=9時間の労働)をしたときには1週間の労働時間としては40時間以内ですが、1日8時間の法定労働時間の枠を超えていますので、1時間の時間外労働をしたことになります。
 他方、ある1日に1時間延長して8時間労働した場合は、たとえ所定労働時間を超過していても、法定労働時間の「1日8時間」の枠内ですので、割増賃金の支払いは不要となります。もちろん、「所定労働時間を超えた時点で割増賃金の支払いが発生する」とする就業規則を結ぶことは、問題ありません。
 法定労働時間も所定労働時間も、休憩時間を除いて考えます。したがって、「始業時刻午前9時、
終業時刻午後5時30
分(休憩時間1時間)」の会社の所定労働時間は、7時間30分です。

 

※法定労働時間(1日8時間)を超えないと、割増賃金の支払いは不要です。

就業規則に、しっかりと規定しましょう。

  時間外労働・休日労働
時間外労働

 36協定を結んでいれば、その協定の範囲内において時間外・休日労働をさせても労基法違反とはなりません。たとえば、時間外労働の限度を「1日5時間、1週間15時間」と協定していれば、ある1日について4時間の時間外労働をさせることが可能です。そのかわり、同じ4時間の時間外労働であっても、もしその1日を含む特定の1週間にすでに12時間の時間外労働をさせていた場合には、1週15時間の枠を超えることから協定違反となるため、認められません。
 なお、時間外労働のうち、午後10時から午前5時までの労働を深夜労働といい、満18歳未満の者を働かせることができないなどの制限があります。

休日労働

 使用者は、労働者に対して、原則として、毎週少なくとも1回の休日(法定休日)を与えなければなりません。この休日に働かせた場合には、休日労働に対する割増賃金(135/100以上)の支払い義務が生じます。
 週休2日制を採用している企業が週2日の休日のうち1日を出勤させても、法にいう休日労働には当たりません。
 

    時間外・休日・深夜労働の割増賃金

 過重な労働に対する労働者への補償のため、時間外に労働させた場合(1か月に60時間以内)には25分以上、1か月60時間を超えて時間外に労働させた場合には、5割以上(※中小企業については適用猶予のため25分以上)、深夜(原則として午後10時~午前5)に労働させた場合には25分以上、法定休日に労働させた場合には35分以上の割増賃金を支払わなければなりません(※割増賃金の計算の基礎となる賃金には、家族・通勤手当その他の命令で定める賃金は算入しません。計算の基礎となる賃金に含まれるかどうかは、名称ではなく内容により判断されます)
 更に、限度時間(時間外・休日労働)を超える時間外労働については、法定割増賃金率(25分以上)を超える率とするよう努めなければなりません。


時間外及び休日労働(労働基準法第36条、37条)

 時間外労働とは、18時間、1週間に40時間を超えて時間外や休日(法定外休日)に労働をさせることです。

 また、休日労働とは、1週間に1日もしくは4週間で4日の休日(法定休日)を確保できない状態で労働をさせることです。

  ここで注意が必要なのは、「法定休日」と「法定外休日」との違いで、法定休日に労働させた場合には、35分以上の割増賃金を支払う必要があることです。
  法定外休日についても、その日に労働させたことにより当該週が40時間を超えることになるならば、時間外労働になりますから、25分以上の割増賃金の支払いが必要になります。

 

  なお、変形労働時間制を採用することによって、18時間、1週間に40時間を超えて労働させても時間外労働にならない場合があります。

時間外・休日労働協定届(36条協定)とは

  使用者が労働者に時間外労働を行わせるためには、予め労働者の過半数で組織する労働組合か労働者の過半数を代表する者との間に労使協定(労働基準法第36条に基づく協定であることから「36協定」といいます)を締結し、所轄の労働基準監督署長に届け出ておく必要があります。

  この36協定においては、時間外・休日労働を行わせる職種や人数、1日や1か月における延長することができる時間の限度を定めておかなければなりません。
  さらに、この延長することができる時間についても、労働者の福祉、時間外労働の動向などを考慮して基準(厚生労働省告示)が定められていますので、36協定の内容はこの基準等に適合したものとする必要があります。

  1. 時間外労働の限度に関する基準について労働基準法では1日及び1週間の労働時間並びに休日日数を定めていますが、こうした法定労働時間を超えて時間外や休日に労働を行わせるには、事前に同法第36条の規定による時間外労働・休日労働協定(36協定)を労使で締結し、所轄の労働基準監督署長に届出なければならない、としています。

 しかし、これは届出さえすれば時間外労働・休日労働を無制限に認める趣旨ではなく、時間外労働・休日労働は必要最小限にとどめられるべきものであることは言うまでもありません。

 

 このため、36協定において定める労働時間の延長の限度等に関する基準として時間外労働の限度に関する基準(平成10年労働省告示第154号)が定められました。労使は、36協定内の内容がこの基準に適合したものとなるようにしなければなりません。

 なお、法定の時間外労働については25分以上、法定の休日労働については35分以上の割増賃金の支払いがそれぞれ必要になります。 

チェックポイント1

 

 法定の要件を満たした36協定の届出が必要です。
 労使は以下の事項について協定しなければなりません。

  1. 時間外労働をさせる必要のある具体的事由
  2. 時間外労働をさせる必要のある業務の種類
  3. 時間外労働をさせる必要のある労働者の数
  4. 1日について延長する事ができる時間
  5. 1日を超える一定の期間について延長する事ができる時間
  6. 有効期間

 協定は、使用者と、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合においてはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者との間で締結する事が必要ですが、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合の労働者の過半数を代表する者は、次のいずれにも該当するものでなければなりません。

1.監督又は管理の地位にある者でないこと

 

2.労使協定の締結等をする者を選出することを明らかにして実施される投票、挙手等の方法による手続により選出されたものであること 

チェックポイント2
 36協定は以下の基準に適合したものとなるようにしなければなりません。

·         36協定の締結に当たっては、安易に臨時の業務などを予想して対象業務を拡大したりすることのないよう、業務の区分を細分化することにより時間外労働をさせる業務の範囲を明確にすることが必要です。 

·         1日を超え3ヶ月以内の期間及び1年間の双方について協定しなければなりません。 

·         36協定で定める延長時間は、最も長い場合でも下表の限度時間を超えないものとしなければなりません。

 特別条項付き36協定とは

 

  臨時的に限度時間を超えて時間外労働を行わなければならない特別の事情が予想される場合に次のような特別条項付き協定を結べば、限度時間を超える時間を延長時間とすることができます。

この場合、次の要件を満たしていることが必要です。

 1.原則としての延長時間(限度時間以内の時間)を定めること

 2.限度時間を超えて時間外労働を行わせなければならない特別の事情をできるだけ具体的に定めること

 3.特別の事情」は、次のア・イに該当するものであること

  ア一時的又は突発的であること 

  イ全体として1年の半分を超えないことが見込まれること

 4.一定期間の途中で特別の事情が生じ、原則としての延長時間をする場合に労使がとる手続等を具体的に定めること

 5. 限度時間を超える一定の時間を定めること

 

 6.限度時間を超えることのできる回数を定めること

 特別条項付き36協定の取扱いの改正

  1. 特別条項付き協定を締結する場合、「特別の事情」は「臨時的なものに限る」ことを明確にする改正が施行されました。
    「臨時的なもの」とは、一時的又は突発的に、時間外労働を行わせる必要のあるものであり、
    全体として1年の半分を超えないことが見込まれるものを指します。限度時間を超えて時間外労働を行わなければならない特別の事情は、限度時間以内の時間外労働をさせる必要のある具体的事由よりも限定的である必要があります。
     
  2. 上のような趣旨から、特別条項付き36協定を締結する際は、限度時間を超えることのできる回数を協定して、その回数については1年のうち半分以下となるよう、労使で「特別の事情」を協議してください。
     
  3. 特別条項付き36協定において、1日を超えて3ヶ月以内の一定期間の労働時間を延長することにより、1年間について限度時間を超えて労働させる必要が生じる場合には、1年間についても限度時間を超える一定の時間を定める必要があります。

※「特別の事情」の例

 

臨時的と認められるもの

臨時的と認められないもの

予算、決算業務

(特に事由を限定せず)業務の都合上必要なとき

ボーナス商戦に伴う業務の繁忙

(特に事由を限定せず)業務上やむを得ないとき

納期のひっ迫

(特に事由を限定せず)業務繁忙なとき

大規模なクレームへの対応

使用者が必要と認めるとき

機械のトラブルへの対応

年間を通じて適用されることが明らかな事由

★適用除外

 次の事業又は業務には、上記の限度時間が適用されません。 

  1. 工作物の建設等の事業
  2. 自動車の運転の業務
  3. 新技術、新商品等の研究開発の業務
  4. 厚生労働省労働基準局長が指定する事業又は業務(ただし、1年間の限度時間は適用されます。)

(育児・介護を行う者の時間外・休日労働)

 小学校就学前の子の養育や家族の介護を行う一定の労働者は、育児・介護休業法の適用を受けることから、労働基準法第36条に基づく時間外労働の協定届を行った場合でも、本人が請求したときは、1か月24時間、1150時間を超えて労働時間を延長することはできません。ただし、事業の正常な運営を妨げる場合はこの限りではありません。

 また、小学校就学前の子の養育や家族の介護を行う一定の労働者は、本人が請求した場合は、事業の正常な運営を妨げる場合を除き、午後10時から午前5時までの間に労働させることはできません。なお、育児・介護休業法は女性労働者のみならず男性労働者にも適用がありますので、この請求は男女問わず行えます。

(時間外、休日及び深夜の割増賃金)

 時間外や深夜(午後10時~午前5時)に労働させた場合には、25分以上法定休日1週間に1日もしくは4週間で4日の休日)に労働させた場合には、35分以上の割増賃金を支払わなければなりません。
これは、たとえ時間外労働・休日労働に関する協定届の提出がなされていなくても支払いの義務があります。

 また、割増賃金の基礎となる賃金には、家族手当、通勤手当、別居手当、子女教育手当、住宅手当、臨時に支払われた賃金、1か月を超える期間ごとに支払われる賃金は算入しません。

(事業場外みなし労働時間制)

 労働者が事業場外で労働し、労働時間の算定が困難な場合には、所定労働時間労働したものとみなされます。
 ただし、事業場外で働く従事者の中に労働時間を管理する者がいたり、事業場外で働く者に携帯電話等によっていつでも連絡がとれる状態にあって随時使用者の指示を受けながら労働したりする場合には、みなし労働時間制の対象外となります。

  また、事業場外労働で所定労働時間を超えて労働することが通常必要となる場合においては、「当該業務の遂行に通常必要とされる時間」または「労使協定で定めた時間」労働したものとみなされます。

(休日労働と時間外労働)

 労働基準法では毎週少なくとも1日、または4週間に4日以上の休日を与えなければならないと定めています。

 これを「法定休日」といいますが、「休日労働」とは、法定休日である11日または44日の休日に労働させることをいい、休日労働には35分以上の率で計算した割増賃金を支払うことが義務付けられています。

  週休2日制など法定休日を超える日数の休日を設定している事業場では、法定休日以外の休日に労働させた場合、それは労働基準法上の「休日労働」ではなく、通常の労働時間に含めて通算され、結果的に法定労働時間を超えた部分が「時間外労働」とされています。